「家・土地が売れない」が招く相続の落とし穴【日本経済新聞】

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更新日時:2013年11月13日はてなに追加MyYahoo!に追加del.icio.usに追加

「家・土地が売れない」が招く相続の落とし穴【日本経済新聞】

カテゴリー:遺言・相続ニュース

相続した家や土地を売却してお金に換えたいという層にとって、逆風が続いています。前回は所有者不明の農地や森林がテーマでしたが、「空き家が全国で増えている」というニュースを目にすることも多くなりました。現在平成25年度(2013年度)の最新データ調査が行われている最中ですが、総務省が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査」によれば、平成20年(2008年)10月時点のデータでも、総住宅数に対する空き家率は「13.1%」の高率となっています。

 また、1世帯あたりに対して何戸の住宅が存在しているのかという住宅戸数のデータを見ても、ひとつの世帯につき「1.15戸」が存在している状態です。この数字からも、住宅の供給が過剰ぎみであることが浮き彫りになってくるでしょう。今年度の調査でも、こういった数字はさらに上がると推測されるかもしれません。

 さらに、同じ統計で10年間の空き家率の推移を見ると「地方での上昇が目立つ」ということもわかります。地方では「死亡者が出生者よりも多い」ことや「都市部への人口流出」などが原因でしょう。一方で、都市部は需要と供給が安定しているように見えますが、都心からのアクセスが少し不便な郊外の住宅地などでは、都心回帰の流れから「地方と同様に空き家率が上昇している」「今後上昇してくる」というのが、実際の現場感覚と近いように思います。

 こうした空き家率の増加は相続トラブルとも無縁ではありません。相続トラブルの「代表選手」のひとつに「主要な遺産が不動産に偏っているため、うまく分けられない」というものがあります。このような場合「遺産分けをお金で調整できない」というばかりでなく、ケースによっては「相続税を納めるお金すら準備できない」といったトラブルにもつながることがあるのです。

もし遺産の中に十分なお金がある、あるいは当事者となる相続人たちの懐に余裕がある状況ならば、「不動産を相続する人」と「お金を相続する人」ということで、うまく分けることができるかもしれません。しかし、必ずしもそういったケースばかりとは限らないのが現実です。十分なキャッシュが用意されていないために、「遺産の不動産を売却してお金に換えて、その代金を相続人たちで分ける」という方法を検討する場合も少なくないでしょう。

 これがいわゆる「換価分割」という方法です。このやり方で遺産を分けることに当事者の相続人全員が同意すれば、不動産の持ち分そのものを巡ってもめる必要はなくなります。「遺産の内訳が不動産中心で、現金が不足している」という場合には、最終的にはこの換価分割によるしかない……という可能性が高まってくるでしょう。

 ところが、この方法にはひとつの大きな「越えるべき壁」が存在しています。それは「不動産の売却がスムーズに進んで、初めて可能になる分け方」だという根本的なところです。先ほどの空き家の統計からも明らかなとおり、地域によっては空き家率が増え、住宅の供給が過剰ぎみで、決して「売り手有利な市場」とはいえない部分もあるでしょう。こうした地域での不動産売却は今後、買い手がつかないという理由からますますスムーズに進まないような事態も予測されます。

 さらに追い打ちをかけるように、2015年からの相続増税の影響を被る可能性があるかもしれません。2015年1月1日から改正相続税法が施行されます。この改正では、非課税枠である基礎控除の引き下げなどによって、相続税が実質的に「増税」となることがすでに決まっています。

この改正の影響で、相続税の対象となる家庭の数が大幅に増えることが予想されています。つまり、それに連動して「10カ月以内の申告・納税期限までに不動産を売却して、相続税を納付するためのお金を捻出しなければならない」ようなケースが増えると予測されているのです。

 ただでさえ空き家率が上昇している地域で、さらに状況が悪化するかもしれません。相続税の納税のために「売り急ぎ」をしなければならない不動産が市場に流れてくる可能性があります。もともと住宅供給が過多のところに、さらに供給が追加されれば、不動産の売り手にとってはかなりマイナスの市況だといわざるをえません。

 こうした流れに関連するものとして、相続税のための売却を見込んで、不動産仲介会社や住宅メーカーなどによる「相続税の立て替え」や「融資サービス」も始まっています。基本的にはそれらの会社との仲介で契約が成立していることなどが条件となっているようですが、相続した不動産の売却を支援し、売却代金で立て替え分を回収する、というサービス形態をとっているようです。

 サービスを提供する側からしても、この取引は必ずしもマイナスではありません。立て替えサービスを使ってもらうことで、相続税の対象となる富裕層に不動産コンサルティングを提供できる接点が生まれることになるでしょう。また、相続した不動産が売却されるタイミングについても、従来よりは余裕が生じることになります。「10カ月以内にたたき売り」のような売り急ぎが起こらず、市場が荒れることを防ぐことができるいった側面もあるでしょう。

いずれにせよ、成り行き任せの売却という形を避けるためには、現在の財産のうちで相続税の対象となるものはどのくらいで、いま死亡するとどのくらいの相続税がかかり、それに対して現金の備えはどのくらいあるか、などをしっかりと棚卸ししておく必要があるといえるでしょう。そのうえで「もし保有不動産を売却すると、どのくらいの価格で売れるのか」ということまで把握しておけば、将来のスムーズな承継のためにかなり有効な情報となるのではないでしょうか。

 人口減少時代のなか、この先も保有不動産の価値が持続するとは限らなくなってきた状況です。その不動産が相続人の世代にとって必要となるかどうかも考慮した上で、「早めに売却を済ませておく」などの準備や整理が今まで以上に求められている局面のように思います。

 ただし、そうした会社は、あくまで対象不動産が売れると見込んで相続税を立て替えてくれるわけで、そうでなければそのサービスを利用することはできないと考えたほうがよいでしょう。実際に、このサービスが利用できる不動産の範囲が首都圏や大都市圏に限定されている場合があるなど、利用にあたっては詳細な条件が設定されているところもあります。

参照ニュースURL

http://www.nikkei.com/money/features/17.aspx?g=DGXNMSFK06037_06112013000000&df=1

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